目まぐるしく変わりゆくビジネスを
支える 

運用と開発の壁がない、
アジャイルな組織に

「新たな共有価値の創造」を支える

アフラックのITインフラ運用変革

「生きる」を創るリーディングカンパニーの挑戦

caretaker with woman in wheelchair in the woods

1974年に日本で初めてがん保険を提供する保険会社として創業したアフラック。2024年に創業50周年を迎え、現在は、「生きるための保険」のリーディングカンパニーから「生きる」を創るリーディングカンパニーとして社会と共有できる新たな価値の創造に取り組んでいます。

 

デジタルの取り組みが加速する中、アフラックにおいてもITインフラの安定稼働の重要性がかつてないほど高まっています。一方で、ハイブリッド・マルチクラウド環境の加速によりITインフラの複雑化が進行し、加えて、1サービス1プラットフォームでは完結せず、プラットフォーム間のシームレスな連携も求められるなど、さらなる高度化が期待されています。

 

「運用は安定稼働だけでなく、いかに付加価値をビジネスや開発側に提供できるかが求められています。特に、ビジネススピードが飛躍的に上がる中、ますます短期化するアプリケーションのローンチサイクルに迅速に対応できる柔軟な運用体制の構築が課題でした」とITインフラ運用管理部 ITサービス運用課長の西岡享禎氏は振り返ります。

 

その中で、もう1つ課題となっていたのが運用現場の業務効率化です。開発部門からの作業依頼への対応や日々のシステム監視業務などは人手を介する作業が多く、そうした体制は限界を迎えていました。業務の完全自動化の実現、さらに品質を担保するために業務の標準化の実現も求められていました。

短期化するアプリケーションのローンチサイクルに迅速に対応でき、開発やビジネス側に付加価値を提供できるような、柔軟な運用体制が求められました

アフラック生命保険株式会社 ITインフラ運用管理部 ITサービス運用課長 西岡 享禎氏
group of young professionals in a meeting room

IT製品単位からビジネス単位へ
組織体制を変更し対応を迅速化

こうした課題の中でアフラックは3つの観点から取り組みを進めました。まず行ったのは「組織」の見直しであり、「Agile@Aflac」の一環で全社的に実践を行っている「トライブ・スクワッドモデル」に基づいたビジネス単位でチームを組織するスクワッド体制へと切り替えました。その実現には、長年にわたりアフラックのシステム運用を支援してきたキンドリルの対応も必要だったとITインフラ運用管理部ITサービス運用課 課長代理の佐藤考英氏は説明します。

「キンドリルには従来、アフラックに合わせてIT製品単位の組織体制で臨んでいただきましたが、ビジネス単位の組織体制に相対するスクワッド体制へ変更し、幅広い相談や困りごとに1つの窓口で素早く対応できる体制となりました」

キンドリルでは体制変更にあたり、インフラエンジニアと開発エンジニアが協調することにより作業効率の向上やコスト低減、品質向上につながる方法論であるSRE(Site Reliability Engineering)を取り入れました。

2つめの取り組みが「ITプロセス」の課題解決です。開発部門やユーザーから次々と寄せられるデータの確認や取得依頼への対応を、ITインフラ運用管理部員の手を介さず、ワークフローシステムを通じて、オープンソースの構成管理ツール「Ansible」で自動取得できる仕組みを構築しています。

これらと並行して3つめの「システム」の観点からは、オブザーバビリティ(可観測性)を高める監視ツールである「Datadog」の導入を進めました。オンプレミスとクラウド環境が入り混じり複雑化した環境では、製品やプラットフォームごとに監視を行う従来の運用では問題が起きた時の影響発生個所の確認、調査対象の選定、調査を実施するまでの道のりが容易ではなく、ユーザー目線での監視の仕組みが求められていたためです。

IT製品単位からビジネス単位の組織体制に相対するスクワッド体制へ変更することで、1つの窓口を通じてより素早い対応ができるようになりました

アフラック生命保険株式会社 ITインフラ運用管理部 ITサービス運用課 課長代理 佐藤 考英氏

自動化に向けたビジョンの策定と

基盤·開発で共通言語としての監視ツール の展開

運用業務の自動化といっても、もちろんそれを実際に進めていくことは簡単ではありません。既存の業務を変革するには、今後の運用業務がどうあるべきかというビジョンが必要です。さらに、運用業務の全ての作業を自動化することは困難であるため、既存業務の一番のペインポイントを解消するためにどの部分を自動化するか、適切な優先順位をつけながら検討しなければなりませんでした。

監視ツールについては、キンドリルとともに現行の監視ツールの課題を整理しながら、コストやユーザビリティなども含めて検討を進め、「Datadog」を採用しました。

しかし、当然ながら導入しただけで成果が上がるとは限りません。開発や障害発生時の対応を迅速化するために、Datadogは運用を担うITインフラ運用管理部のツールではなく、開発部門と共通の監視ツールとして定着させるという狙いがありました。両者の壁を無くし、共通理解を持ってツールを利用するためにも工夫が必要です。

「システムのトラブルは、運用部門が問題に気づいて初めて対応が始まることが一般的ですが、それではレスポンスの遅延という新たな脅威に対応しきれません。運用部門と開発部門が同じ理解をもちながら、さらにトラブルを未然に防ぐ積極的な姿勢を持つために、時間をかけて丁寧にコミュニケーションを取る必要があると考えました」とITインフラ運用管理部長 正木 聡氏は振り返ります。

three people having a coffee break

単なるツールの導入ではなく、業務プロセスそのものや運用組織体制の変更を伴う取り組みに挑むアフラックはキンドリルとともにプロジェクトを進めてきました。

 

ビジョンの作成に関しては、キンドリルと複数回ディスカッションを重ねつつ、キンドリルの持つ知見も活かしながら、PoCを通じて段階的にAnsibleによる自動化を進めていくプランを作成しました。

 

また、Datadogを開発部門に浸透させるための施策でも、キンドリルのサポートを受けながらいくつかの施策を行っていったとITサービス運用課の若井那奈氏は振り返ります。

 

「集合研修やハンズオンでは、キンドリルの講師からは利用方法にとどまらず、監視と可観測性の違いや、日々の障害対応の中での活用方法についてなど、込み入ったところまで丁寧な説明を受けました。利用ユーザー数が研修後に40%増加したことからも、参加者はDatadogの利便性を実感できたと感じています。併せて、Datadogが提供する機能の本質的な理解を促すためのガイドブックの整備も進めていきました」

集合研修やハンズオンでは、キンドリルから監視と可観測性の違いや障害対応時の活用方法などを含めて丁寧な説明を受けました。

アフラック生命保険株式会社 ITインフラ運用管理部 ITサービス運用課 若井 那奈氏

この取り組みによるProgress

64%

体制変更による効率化の結果、 アラート件数を大幅に削減

58%

開発部門から作業依頼を受けて手動対応した件数を大幅に削減

250

監視シナリオを250種類用意。必要な情報を10分間隔で自動取得

 

アフラックの新しい価値創出を支えるベースが整う

こうした取り組みによって、アフラックにおけるインフラ運用業務ではさまざまな効果が得られています。

  • Ansibleとワークフローシステムを組み合わせることで、開発部門からの依頼作業を自動化。依頼を受けて手動で対応した作業は、3カ月間で1,981件あったのが828件と58%削減。また平均3営業日かかっていたリードタイムがゼロに
  • Ansible導入によって業務省力化が進んだことで、運用担当者は別の業務に充てる時間をより確保できるように。自動化によって運用部門側の対応コストが削減されたことで、開発部門は運用部門へ気軽に作業依頼できるように

  • ビジネス単位のスクワッド体制に変更し、開発部との連携を強化した結果、複雑なシステムとアプリ構成の理解が促進され、不要アラート整理などの対応が進んだことで月間アラート件数を64%削減
  • オブザーバビリティの考えに基づく高品質なシステム監視の仕組みを構築したことで障害の未然検知・予防も推進
  • システム目線ではなく、ユーザー目線での監視シナリオを250種類用意。手作業に依存せず、必要な情報を10分間隔で自動取得

  • Datadogにより、トラブルシューティング時の影響範囲の確認やその後の調査対応を迅速化

  • SRE運用体制の結果として、エンジニアリングの目的自体をコスト削減から信頼性の向上にシフトし、より最適な環境づくりに注力できるように

     


またキンドリルについても、西岡氏はこう評価します。

「我々4人の一致した意見として、キンドリルは私たちのビジネス戦略やIT戦略を理解していただいた上で寄り添い、運用の高度化や新しいサービスの提案をしていただけました。キンドリルの利益重視ではなく、お互いにメリットのある提案が可能なのも、ベンダーニュートラルである強みでしょう」

アフラックとのこれからの取り組みに関しては、キンドリルのサイト・リライアビリティ・エンジニア 竹屋 正樹も「キンドリルの統合プラットフォームであるKyndryl Bridgeを介して日々の運用業務を可視化することで、新しい気付きを得ること、そして誰もが同じ運用業務を実施できるように平準化することを目指します」と話します。

最後に正木氏は、今後の展望とそれを支援するキンドリルへの期待を語ります。

「アフラックの新しい価値創出を支えるインフラやその運用のベースは整ってきました。今後はインフラと開発のボーダレス化をさらに進めるつもりです。キンドリルには私たちがカバーできていない世界の事例や最新ソリューションを紹介していただき、先進事例を一緒に作っていきたいと思っています」
 

mom dad and child outside under a tree

アフラックの新しい価値創出を加速するための体制として運用と開発のボーダレス化を引き続き進めつつ、キンドリルの力も得ながら先進事例を作っていきたいと思います。

アフラック生命保険株式会社  ITインフラ運用管理部長 正木 聡氏

アフラック生命保険株式会社

「がんに苦しむ人々を経済的苦難から救いたい」という想いのもと、1974年に日本で初めてがん保険を提供する保険会社として創業。以来、約50年にわたりがん保険をはじめとする新たな共有価値を創造し続けてきました。「生きるための保険」を中心としたコアビジネスの伸展とビジネス領域の拡大、エコシステムの構築に取り組みながら「生きる」を創るリーディングカンパニーとして挑戦を続けています。

プロジェクトチーム

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正木 聡 氏

アフラック生命保険株式会社
ITインフラ運用管理部長
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西岡 享禎 氏

アフラック生命保険株式会社
ITインフラ運用管理部 ITサービス運用課長
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佐藤 考英 氏

アフラック生命保険株式会社
ITインフラ運用管理部 ITサービス運用課 課長代理
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若井 那奈 氏

アフラック生命保険株式会社
ITインフラ運用管理部 ITサービス運用課
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竹屋 正樹

キンドリルジャパン
ストラテジック・ デリバリー本部 サイト・リライアビリティ・エンジニア
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柿澤 三起

キンドリルジャパン
アフラック事業本部 カスタマーパートナー

この事例は2024年11月のインタビューをもとに構成しました。

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